アクセプト ニューヨーク公演 -Too Mean to Die-
メタル好きの管理人だと言っておきながら、メタルの記事が一つもなかったので、ここらで一つくらい記事を書いておこうと思う。2022年10月22日に往年のジャーマンヘビーメタルバンドの大御所アクセプトがニューヨークにやってきたので、見に行って来た。アクセプトのシンガーと言えばわたしの中ではUdoなのだが、今回のシンガーはMark Tornillo。でも、最近のアルバムが期待以上にかっこ良かったこともあり、Markのパフォーマンスも観て見たかった。更には、会場がウエストチェスターにあるあまり大きくない町の小さい会場だったこともポイントが高かった。この会場の規模であれば、後ろの方の席でもかなり近い距離で見れるだろうと踏んでいた。尚、開場ぎりぎりに着いたにも関わらず、前から3列目の席を確保することができてテンション爆上がり。
ちなみに前座が3バンドおり、会場に到着した時にちょうど2バンド目が始まったところだった。若いバンドで前座なのでもちろんそれほど上手い必要はない。しかし、何かおかしい。3ピースのバンドなのだがベースが居ないのである。ボーカル無しならともかく、ベースが居ないのはなんとあろうことか。演奏もどこか調子外れで、演奏者もヤケになっているように見える。会場はまだ空いている席も多い。さらに、見てるのは椅子に座ったおじいちゃんばっかりである。そうなんだ。このホールにはオペラ座の様に備え付けの座席があるのである。大体にして、どうしてメタルバンドのコンサート会場としてこの会場が選ばれたのかが分からない。とにもかくにも、若いバンドは(バンド名忘れた。すまん、青年たち)、自暴自棄に上手いとは言えぬ演奏を繰り返す。おじいちゃん達は、孫でも見守るかのような面持ちでぱらぱらと拍手を送っている。わたしは思った。このバンド、当日にベースに逃げられたんじゃないかと。だって、そうでもなければベースが居ないバンドの説明がつかない。ズボンを腰下まで下げて、パンツが半見えになったシンガーがひっくり返った声で絶叫して演奏は終わった。若いバンドはどことなく悲しい表情で機材を片付けてステージから去って行った。あぁ、青春の一ページ。次に演奏する時は、ベースを連れて来るんだよ。そう祈りながら次のバンドを待つ。
次のバンドも同じ様なバンドだったらどうしようと不安になる、いや、前座はまだ良い。もし、ACCEPTが歳のため演奏に支障が出ていたらどうしようか。以前、Motley Crueが復活した時に、丸々太ったVince Neil がKick Start My Heartを首を絞められたアヒルの様に苦しそうに歌っているビデオを見て愕然としたことがある。その様な惨事を目撃することだけは何としても避けたい。そうこうしている内に次のバンドが現れる。Black Water Risingと言うニューヨーク出身のバンドだった。骨太なサウンドでかなりカッコ良い。音的には、どことなくBlack Label Societyを彷彿とさせる感じ。いや、良いバンドで良かった。途中でボーカリストが、椅子に座って見られてるのって変な感じだ、いつもこんな感じなのかな、と苦笑しながらMCを入れる。いや、わたしだって座りながら見てるのはなんとなくもどかしい。でも、周りのおじいちゃんたちがみんな座っているのだ。わたしだけ立ち上がったら後ろのおじいいちゃんに迷惑がかかる。叫んで立ち上がりたい衝動をぐっとこらえて、座席からできる限りの拍手を送る。
Black Water Risingは良い感じで終了し、後はメインを待つばかり。会場の熱気は否が応でも高まってくる。会場もこの頃にはほぼ全ての席が埋まってくる。そこで満を持してACCEPT登場!するとである。なんと、おじいちゃん達が椅子から立ち上がったー!!!
さっきまでは、メインが出て来る前に寝落ちしちゃうおじいちゃんがいるんじゃないかと思ったくらいだったけど、やっぱりメインのバンドを見るときは気合いが違うらしい。でも、こうなるとステージ上も会場もおじいちゃんだらけ!だがそこは大御所。おじいちゃん達の演奏はすごかった。お得意のギター、ベース、ボーカル3人がユニゾンで前後に動く動きなんか完全にシンクロしていて、もはやミュージカルレベルの完成度の高さ。Wolfが腕を回す決めポーズも完全にタイミングばっちり。これはすごいわ。コンサートと言うより舞台と言った方が良いかもしれない。それはそれ。下で見ているおじいちゃん達だって負けてない。のりのっりで盛り上げる。何かもう良い意味で新興宗教レベルだった。演奏できなくなっていたら、なんて不安はどこへやら。これは最高。
ちなみに、今回Markの体調不良(ウイルスに感染したそう)でニュージャージーの公演が一日キャンセルになった事実もあり、この日もキャンセルになるんじゃないかと危ぶまれてたらしい。そのため会場に来なかったファンも多かったそう。実際この会場は2階席があったのだが、この日は客入りが悪かったため2階席は閉鎖されていた。喉のコンディションに不安があったMarkは、1人ではコンサートを乗り切ないと判断し助っ人を要請。途中で長い付き合いのある友人だと紹介されて出てきたのは、背がすごく高い金髪長髪の金縁眼鏡をかけて革ジャンを着たおじいちゃん。
なんだ、この強烈なインパクトがあるおじいちゃんは!と思ったがこのおじいちゃんがすごく良い声で歌うのである。とにかくデカいので迫力満点。ウルフよりでかいと思う。若い頃はさぞかし恰好良かったに違いない。後で知ったのだが、このデカいおじいちゃんはDangerous Toys のボーカル Jason McMaster さん。若い頃の美形っぷりがすごい。
Markが小さいこともあるけど、JasonとWolfとMartinが3人でヘドバンするとすごいメタルですわ。
これは全くの余談だが、前座のバンドはケーブル使っていたけど、ACCEPTはケーブルレス。自由にステージ上を動き回れるのである。後ろの雛壇で黙々と弾いてたベーシストもギタリストも何曲かは雛壇から出してもらえて、楽しそうにステージ前に出てきて弾いてたのが微笑ましい。こう言う気遣いができるWolfはやっぱりベテランである。ちなみに、この日Wolfが使っていたフライングVはどこもこれも美しかった。
熱狂の内、往年の名曲が数々演奏され会場は最高に盛り上がる中、後半ではBall to the Wallなども披露される。こうして熱狂の覚めぬまま、コンサートは無事終了したのである。なんともラッキーなことに、ドラムスティックとギターピックまで手に入れて、夢覚めぬまま眠りに落ちたのでありました。いやいや、楽しかった。これだからメタルは止められん。
今夜も最後までお付き合いいただきありがとうございました。